王子の狐

 f:id:mitokioquerido:20190412185808j:plain 桜の名所飛鳥山のそばを通る石神井川の脇に落語「王子の狐」に出てくる料理屋がある。この噺は女に化けた狐を人間の方が騙すという実に面白くない設定だか、どうも宣伝コピーに料理屋から金をもらった才能のない作家が作ったものらしい。それにしても噺は実につまらない。

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     大晦日の深夜12時から始まる「狐の行列」

噺の筋書きは女に化けて人を騙そうとした狐が見破られて逆に人にだまされるというものである。そして料理屋でしこたま酔わされた狐は飲食代を払わされる羽目になる。この料理屋の名物が卵20個を使ったという大きな玉子焼きだ。おじちゃんが食べた時は3500円だったから今はもっと高くなっているだろう。正直言っておじちゃんが作った玉子焼きのほうが余程旨い。それに卵20個の原価はせいぜい400円か500円だろう。こんな不味いものにしては高すぎる。その他の料理も押して知るべしだ。築地の松露の453円の玉子焼きのほうが100倍も旨い。王子には狐じゃなくて人を騙す不逞の輩がまだ生息している。

 

江戸の昔、飛鳥山一帯は八代吉宗の命により植えられた桜(1720年代)が文化文政期(1803-1850)には大木に育ち、江戸庶民の春の行楽地になっていた。平安の古き時代に建てられたと云う王子稲荷神社、当時は岸村にあることから岸稲荷と呼ばれていたがそばに王子権現が建立されてからは王子村と呼ばれるようになったという。現在でも稲荷神社の辺りは岸町の町名のままだ。

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神社の隣には名主の滝という静かな庭園がある。現在は東京都所有で無料で開放されている都会の喧騒が嘘のような静寂な場所だ。ただ惜しむらくは森が大きくなりすぎていて昼なお暗い感は否めない。桜の季節だけでなく紅葉の今も冬枯れの季節もそれぞれに趣があり王子周辺の癒しの空間になっている。