ちょっと!そんな新しいの着てどこ行くの?

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おじちゃんの友人で中年を過ぎた売れない落語家がいます。先日、目をつけていたクラブのホステスとやっとのことでデートにこぎつけたそうです。

そして普段着ることのない新しい背広を大枚をはたいて買い、その日を待っていました。

出かける日はあいにく朝から雨で、デートの時間近くになるとバケツをひっくり返したような大雨になりました。それでも念願のデートです、いそいそと出かけようとすると、おかみさんが、
「あんた、こんな大雨の日に買ったばかりの洋服着て、どこ行くのよ」と後ろから言いました。

それでもどしゃ降りの雨の中、待ち合わせの銀座に着くと、こんな大雨だから来ていない、と思っていた彼女の姿がありました。そしてその友人は単細胞ゆえに「やっぱり俺にトンと来ているな」と自惚(うぬぼ)れました。

お茶を飲み、少し激しさの収まった雨の中を、松屋へ向かって歩き出した交差点で、立派な紳士がじろじろとこちらを見ています。相合傘(あいあいがさ)の道行(みちゆ)きを、こいついい女を連れているので妬(や)いているんだな、と思っていると、その紳士が、つかつかと寄ってきました。なんだいこいつ、ずうずうしいのも程があるねー、エー、オレの彼女を紹介しろとでも言うのかねーと思っていると、ナント耳打ちするじゃないですか。いい女のそばで、なんなんだ一体こいつは。すると、その紳士は

 

「あなた、前のチャックが開いていますよ」だって。

 

銀座のど真ん中で若い女性とデート中ずっと、ズボンのチャックが開けっ放しになっていたんです。