息苦しい天空の都市
ボリビアで一番の大都会ラパスは高度3800mのアンデスの山の中に突如現れます。街に入るには、大きなあり地獄のような形状の街の一番上からぐるぐると下って行かなければなりません。
普通は高台が高級で地価が高いのが世界の常識ですが、ここラパスでは面白いことに、あり地獄の底の部分が一等地になっています。
この街では絶対に歩いて高台には行かないほうが無難です。必ずバスで高いところまで行って下ってこなければ、すぐに高山病にかかってしまいます。ただ歩くだけでもすごく苦しくなります。酸素が 平地の半分しかないからです。
おじちゃんは一週間すれば慣れると、現地の人に言われましたが息苦しさは一週間過ぎても続きました。何度酸素ボンベのお世話になったか分からないくらいです。大きなホテルには入り口に酸素ボンベが常備されています。それほど息苦しい街です。
ある晩、街で知り合ったボリビア美女を誘い、食事にとホテルを出てレストランを探しました。あまり歩くと息苦しくなるので、わりと近くの一軒の民家のようなレストランに入りました。本当に民家をレストランにしたもので、家族で経営しているようです。応対したタキシードを着たボーイ姿の男の人がオーナーのようです。素人ぽい所に何か暖かいものを感じました。
料理が運ばれてきて、一口食べるとナント美味しいこと。それは今まで食べたラパスで一番美味しい料理でした。
全てが美味しく充分満足したので、それを伝えると、食後のお酒で自家製の取って置きのがあるからと、グラスに一杯運んできました。下戸のおじちゃんは、それでなくても息苦しい天空の高地です。
アルコールが入ると良くないとは思いつつ、同伴の美女の奨めもあって、折角出されたものを断るわけにいかないので、ひと口呑みました。ほんのり甘くとてもフルーティで、下戸でも呑みやすいものでした。
元々呑めないのに、温かいもてなしに、しかも美人の前でつい断れずに呑んでしまったのがいけませんでした。急に動悸が激しくなり、なんと気絶してしまいました。酸素が少ない高地で飲みつけないものを呑んだせいです。
気がつくとベットの上で、医者とレストランのオーナー家族とくだんの彼女が見守っていました。何と恥ずかしかったことか。気がついたときの、彼女の怒りようがすごかったのを思い出します。また、えらく迷惑をかけてしまったことを。でも暖かい旅の大切な思い出です。