樋口一葉のたけくらべ

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             大音寺

『廻れば大門の見返り柳いと長けれど、お齒ぐろ溝に燈火ともしびうつる三階の騷ぎも手に取る如く、明けくれなしの車の行來ゆきゝにはかり知られぬ全盛をうらなひて、大音寺前だいおんじまへと名は佛くさけれど、で始まる樋口一葉の「たけくらべ」という小説はほとんどの方が聞いたことがあると思います。この小説が生まれたのは、一葉が浅草の裏手にある竜泉寺という町に少しの間住んだ経験から生まれました。

あれだけ教養があり努力家の一葉でしたが、当時の文筆業は出版元の都合による買取り制でしたので、書いても書いても貯蓄できるほどの収入は得られませんでした。本郷菊坂で代書やお針の仕事で生計を立てていた一葉でしたが、つきまとう貧しさに困窮して雑貨屋でもして糊口をしのごうと、世間体から知る人のいない竜泉寺に引き移りましたが、やはり商売はうまく行かず僅か9ヶ月ほどで再び本郷に戻ってきました。
その時の経験から「たけくらべ」は生まれました。才能もあり文才も優れていたのに貧しさゆえに花開かずに、重なる苦労から結核に罹り僅か24歳の若さで他界してしまいました。この辺りを訪れると当時暮らしていた一葉の苦しい息遣いが思い浮かぶ感じがしてきます。