都々逸(どどいつ)

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かなり以前に常磐線周りで東北・北海道を旅したとき、定かではないですが確か石岡駅だったでしょう、下り列車の先頭のホームの一角に常陸が故郷だった寄席芸人で、都々逸を津々浦々に浸透させた功労者「都々逸坊扇歌」(どどいつぼう せんか)の歌碑が建っていたのを覚えています。かなり前ですから、今現在あるかどうか確かめたわけではないですが。その碑には『今日の旅 花か紅葉か知らないけれど 風に吹かれてゆくわいな』と彫られていました。

偶然、列車が止まったところに在ったので、なんかこのー、「前途三千里のおもい胸にふさがりて」と嘆じた芭蕉ではないですが、これから長いみちのくの旅に出かける心の中にひどく響いたのを覚えています。
また円生が落語の枕でこの扇歌のことをよく噺していたので余計に印象に残ったのでしょう。

情歌といわれる都々逸、いいのがありますね、

『ちらりちらりと降る雪さえも 積もり積もりて深くなる』
『浮名立ちゃ それも困るが世間の人に 知らせないのも惜しい仲』
『言葉のはずみで 別れた人に 今夜は逢えそな 朝の蜘蛛』
(蜘蛛が朝巣をかけるとゲンがよいとの諺から)
『山のあけびは何見てひらく 下の松茸見てひらく』
『ついておいでよこの提灯に けして(消して)苦労(暗う)はさせぬから』
『皺のよるまで あの梅の実は 味も変わらず すいのまま』(変わらぬ女心)
『諦めましたよ どう諦めた 諦めきれぬと 諦めた』(扇歌)
『たんと売れても売れない日でも 同じ機嫌の風車』(〃)
『白鷺が 小首かしげて二の足踏んで やつれ姿の水鏡』(〃)

『あとがつくほどつねっておくれ あとでのろけの種にする』 (志ん生がよく演った)
『あとがつくほどつねってみたが 色が黒くてわかりゃせぬ』 (      〃    )
『この酒を 止めちゃ嫌だよ酔わせておくれ まさかしらふじゃ言いにくい』
『火鉢引き寄せ 灰掻きならし 主(ぬし)の名を書き目に泪』(        〃     )

『嫌なお方の親切よりも 好いたお方の無理がいい』
『お前に見しょとて 結うたる髪を 夜中に乱すも またお前』
『惚れさせ上手なあなたのくせに 諦らめさせるの 下手な方』
『君は吉野の千本桜  色香よけれど   きが多い』
『おまはんの 心ひとつでこの剃刀が 喉へ行くやら眉(まゆ)へやら』
『酒に酔うまで男と女 トラになるころ おすとめす』